案外正しいのは「みんなの意見」なのか

だいぶ前に買った本で
いまさらという気もするのだが、
やはりペストセラーになるだけのことはある。

「みんなの意見」は案外正しい

「みんなの意見」は案外正しい

 ジェームズ・スロウィッキー

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この本の優れているのは
「群衆の叡智 (the wisdom of crowds)」が
いかに機能するかだけでなく、
それがいかに機能しないかについても
十分に考察されているところだ。
群衆が本当に賢いのなら、
なぜ渋滞が発生するのか。
なぜ市場はバブルを起こすのか。
そういった「群衆の叡智」が働かない状況についても
極めて明敏なケーススタディがなされている。
ただ、どうしても気になる点が。
案外正しいのは
「みんなの意見」なのだろうか。
本書の原題は
THE WISDOM OF CROWDS
となっている。
これを「みんなの意見」としていいのだろうか。
“I felt something in the crowds.”
を
「みんなの中にいて、感じたことがある。」
とすると
明らかな誤訳だ。
前者は
「互いに関係を持たない雑多な人ごみの中で
 やはり彼らと関係を持たない自分が何かを感じた
」
と言っているのであり、
後者の訳では
「それぞれが影響し合いながら生きている集団の中にいて、
 その一員である自分が何かを感じた
」
というイメージになってしまう。
日本語の「みんな」は
群衆の叡智が働くための条件
・多様性
・独立性
・分散性
とは正反対の属性を持つ集団を表すことが多い。
とすると
『「みんなの意見」は案外正しい』
ではマズいのではないか。
とはいえ
そこのところを置き換えて読めばいいだけで、
極めて興味深い一冊であることには変わりない。
しかも
自分も最初はタイトルが気になって買ったのだから
偉そうなことは言えないのもわかっている。

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2 Responses to “案外正しいのは「みんなの意見」なのか”

  • 2006/09/14 12:45

    今回も、感心しながら読ませていただきました。
    これは出版翻訳史上でもかなり大型の「誤訳」ですね。
    群衆の叡知が誤解されないためにも、誤訳であることを “みんな” に伝えなきゃ :P

  • 2006/09/16 13:39

    > baldhatterさん
    そういうわけで、
    baldhatterさんのブログでも
    書いてくださったわけですね。
    ありがとうございます。