『仕組み進化論』は「小飼弾の」でいいんだろうか

日本実業出版社の多根様から頂戴しました。
ありがとうございます。

小飼弾の「仕組み」進化論

最近「インターネットを使って何かしたい」
という漠然としたご相談を受けることがよくある。

具体的にどんなことを、というのはなくても
「とにかく何とかしないと」
「今のままじゃダメだ」という空気は
いろんな業界に漂っている模様。

この先を生き抜いて行くには今までのやり方ではダメで、
新しい「仕組み」が必要だということだろう。
まさに本書の出番だと思う。

著者は泣く子もビビるカリスマプログラマーの小飼弾さん。
まさに仕組み作りのプロフェッショナルが
仕組み作りについて語るのだから
こんなに頼もしいことはない。
実際「何とかしたい」とおっしゃる方々には
「まずはこれ読んでください」と言ってもいいんじゃないかと思う。

詳細な目次なんかは
著者のブログに載せられているのでそちらで。

ただひとつ気になったのが本の題名。
『仕組み進化論』に
「小飼弾の」とつける必要はあったんだろうか。

小飼弾のアルファギークに逢ってきた』の場合は
既に小飼さんのことを知っていそうな人が対象だろうからいいとして、
本書は内容から拝察するに
ターゲットは小飼さんのファンや IT 業界の人より
むしろ小飼さんのことを知らないような人たちなんじゃないだろうか。

「一流プログラマーは仕組み作りをこう考えるよ」というのを
「プログラムなんて宇宙人のやること」と思っているような人に対して
わかるように伝える本という捉え方でよろしいか。

じゃあそういう人が本書を手に取ったらどうだろう。
「小飼弾の」とつけられていることによって影響が出るとしたら

  • 「知らんから自分には関係ない」と思って棚に戻す。
  • 「どんな人なんだろう」と思ってプロフィール欄を見る。

のいずれかじゃないだろうか。

個人的には本を買う前に著者プロフィールを見ることが多いので
2番目の方をやると思うんだけど、そこにはこう書かれている。

小飼弾(こがい・だん)

1969年生まれ。ブロガー/プログラマー/投資家。1996年ディーエイエヌ有限会社設立、1999年オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)CTO(取締役最高技術責任者)として、上場前の同社の礎を築く。2001年再びディーエイエヌ有限会社代表取締役。2004年、「404 Blog Not Found」開始。人気No.1のアルファブロガーであり、プログラミング言語Perlの標準添付最大のモジュール「Encode」のメンテナンスを担当するカリスマプログラマーとして活躍。著書に『小飼弾のアルファギークに逢ってきた』、『弾言』など。

特に Perl のくだりは多くの人にとって
たぶん宇宙語にしか見えない。
結果「自分にはわからないことをやっている人の本」なので
「知らんから自分には関係ない」と思って棚に戻す。

本当は、その方こそまさに本書を読むべき人かもしれないのに。

先日 電車の中吊り広告で
石川遼のゴルフ上達日記』という本のタイトルを目にしたけど、
これはゴルフ上達に関心があるだけでなく
石川遼というプロゴルファーを知っている人を対象としているから
まさにこのタイトルでいいと思う。
実際に売れているかどうかは知らないが。

また仮にゴルフの上達を目指していて
石川遼というゴルファーを知らない人がいたとしても、
スポーツ界で冠本を出すということになれば
それはそれは有名で優秀な選手かコーチであろうことは推察できる。

ところが百花繚乱のビジネス書の世界ではそうもいかない。
ありとあらゆるタイプの人が次々といろんなことを言うから
名前がどーんと出ているからといって
「きっと有名な人だ。買おう」
とはならないんじゃないだろうか。

ではなぜこういうタイトルになっているかというと、
邪推してすみませんけど
「小飼さんの人気にあやかりたい」
という雰囲気だったんじゃないかと思ってしまった。

誰がタイトルを決めたのかも知らずに
憶測でものを言ってるだけですけど、
そう思っちゃったんだから仕方がない。

もちろん小飼さんといえば寝た子も叱るアルファブロガー。
その文章に強烈な説得力があるというのはわかる。

ただそれはあくまで
そこで展開される文章そのものの力であって、
いったん売れたから後はネームバリューで売ればいいや
というやり方とはまったく違う。

確かに業界の超有名人で
かつ極めて高い人気のある人だから
かなりの初速が出るかもしれない。

けど、ある程度以上継続して売るということになると
もっと広い範囲に訴えかける必要があるので、
むしろその出し方は逆効果なのではないかと
素人考えではそのように思いました。

これだけはっきりとすっきりとみっちりと
「仕組み」作りについて訴えかけた本なのだから
すでに生み出された価値を利用するのよりは
むしろそのもの自体の価値を世に伝えて売るための
新しい「仕組み」が見てみたかったなあ。
と勝手なことを言ってみる。

とはいえ、広く一般の業務における仕組み作りに関して
示唆に富んだ内容で、
今までのやり方を脱却したいと思っている全ての人に
きっと何らかのヒントを与えてくれる一冊だと思う。



小飼弾の「仕組み」進化論
小飼 弾 (著)

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要するに、
ちょっと斜めからものを言いたい気分だったけど
中身には文句がないから
せめてタイトルにいちゃもんをつけてみただけです。

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One Response to “『仕組み進化論』は「小飼弾の」でいいんだろうか”

  • 2009/04/16 19:53

    # 『仕組み進化論』は「小飼弾の」でいいのだ

    3月末、来京した「頭ん中」のマスナガさんにお会いしました。 そのとき私から差し上