温泉の注意書きに学ぶ「伝わる」メッセージのために覚えておきたいこと

その注意書きは、確かに読んでいた。
書かれた言葉の意味も理解していた。
それでも、そのメッセージは伝わらなかった。

露天風呂のメッセージ

初めて行った露天風呂の壁に
こんな貼り紙がされていた。

一段目の下は低くなっています。お気をつけください。

一段目があって、下の段もあるんだな。
下の方の段は、低くなっているんだな。
だから気をつけないといけないんだな。

そして、風呂に入った。
少しびっくりした。

深い。この風呂、深いよ。

確かに書かれていた

確かに、そのことは書かれていた。

よくある露天風呂のように、岩場が段になっていて
一段目は出入りのための階段と腰掛けを兼ねた部分。
その下の段が、風呂の底。

確かに、一般的な浴槽と比べて、下の段が低い。

言葉の意味は理解していたのに
実際の感覚と結びついていなかった。
だから、入って少しびっくりした。

どこですれ違ったか

営業時間外の浴槽は空なんじゃないだろうか。

何も入っていない露天風呂を思い浮かべれば
そこにあるのは一段低くなっている岩場でしかない。

その段差は一般的な風呂のものより大きいから、
注意喚起のために「低くなっています」と書いた。

ところがお湯の張られた浴槽について
「低い」という表現はあまり使わない。
湯が入っている時点で「低い」は「深い」に変わるから。

入浴客は常にお湯が張られた状態のお風呂に入るから、
「低い」と言われても
「うっかり座り込んだら顔まで浸かる」という状態には結びつきにくい。

ちょっとすれ違ってしまった。

誰の視点からの言葉か

中に入って掃除をする人に注意喚起するなら

下が「低く」なってるから気をつけてね

入浴客に向けて言うなら

底が「深く」なってるから気をつけてね

同じ形状について注意を促すにも、
誰に向けて言うかで表現は変わりますね。

自分にとって、ある言葉で表されるものが
他の人には別の言葉でないと伝わらない
という状態があることを意識しておくと
少しだけ工夫できるかもしれないな、と思ったので
忘れないように書いておきました。

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