教師時代最後の教え子に贈ったメッセージ

ちょうど5年前の今日、最後の教え子の卒業式だった。

いつも思いつきでものを言ってばかりだったんだけど
感極まってうまく話せなくなってはいけないと思って、
そして実際そうなりそうな気がしたので、手紙を書いた。

そのとき彼らに贈ったメッセージを読み返してみたら
まさに今の自分にとって大切だと思えることが書かれていたので
ここにも載っけてみることにした。

一人ひとりに向けた個人的なメッセージだけど
5年も経ったからもういいよね。

今日は、君たちの豊かな人生が始まる喜ばしい日です。
はなむけの言葉として、一度くらいは教師らしいことを言っておこうと思います。
ちょっとキザな言葉が続きますが、これで最後だから気にしないように。

これから生きていく上で覚えておいてほしい、心に留めておいてほしいことが3つあります。

ひとつは、時間を大切にすること。

後ろの写真を見ましたか。3年前の君たちです。高校に入ったばかりの君たちです。
覚えていますか。あれから3年が経ちました。振り返れば一瞬の出来事のようです。

時間は、確実に過ぎていきます。そして、二度と戻ってくることはありません。
どんなに退屈に、いつも通りに思える今日があったとしても、それは人生において一度きりしかない、かけがえのない今日です。

二度とやってこない今日を、この一瞬を大切に。

そうすれば、時間は大きな財産となって、あなたの人生を豊かにすることでしょう。

次に、自分の魂に嘘をつかないこと。

今は漠然とした思いしかない人も、自分の目指すべき方向が見あたらない人も、自分の中にある沸き立つ思いに気づく日がきっと来ます。
魂の叫びが聞こえる日が、きっと来ます。

そんなとき、それに困難がつきまとうから、失敗するかもしれないから、どうなるかわからないからという理由で、自分の魂に嘘をつかないことです。
やってみたいこと、進んでみたい方向があるのに、一歩を踏み出せない自分に理由をつけて、自分をごまかしたりしないことです。

やってみればいいじゃんか。失敗したら、やり直せばいい。

どうか、自分の可能性を低く見積もることのなきよう。
そして、いつしか大冒険の物語を聞かせてください。楽しみにしています。

最後に、人との出会いを大切にすること。

生徒から「何で教師になったのか」と聞かれたら、いつもこう答えてきました。
「君たちと出会うためさ。」
その場では冗談めかして言っていましたが、あれは本当に心からの言葉です。
君たちと出逢えて、本当によかった。

ほんのひとときでも、誰かと出会い、心を通わせるというのは、他の何物にも代え難い喜びです。

これから先、数え切れないほどの出会いがあると思います。
そのどれひとつとして、無駄なものなどありません。

ひとつひとつの出会いを、大切に。

人生の豊かさとは、結局のところ、すべてその大切な出会いによって決まるのではないかと思います。

出会いを、とか、可能性を、とか、もともとそういうことを口にする人間ではなかった気がします。
この3年で、自分自身が大きく変わったように思います。
君たちと時間を共有するうちに、本当に大切なものを素直に認め、口にできるようになりました。
人に伝えられるようになりました。
君たちが成長してきたように、自分もこの3年で成長できたと思っています。
君たちに何かを教えているつもりでしたが、自分が教えられ、育てられたように思います。
感謝しています。みんな、どうもありがとう。

君たちのことを、誇りに思います。
本当にありがとう。

そして、卒業おめでとう。

君たちの大いなる旅路に、幸多からんことを。

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