「即戦力」に頼る会社は必ずダメになる

社会保険・年金のキモが2時間でわかる本』の石井さんからのご紹介で
著者から直接ご賜本。ありがとうございます。

「即戦力」に頼る会社は必ずダメになる

300社以上の人事制度を支援してきた著者は
成果主義と「即戦力」への依存を真っ向から否定する。
「必ずダメになる」が挑発的でいいですね。

まずは人件費と売上の関係について
プロ野球の球団と選手になぞらえて明快に説明。
このあたりを意識しながら仕事してる人って
実はものすごく少ないんじゃないだろうか。

その上で
なぜ成果主義では業績悪化のスパイラルに陥ってしまうのか、
なぜ「即戦力」に頼る会社はダメになるのか、というところから
「じゃあ経営者はどうすりゃいいのさ」
「組織の中にいる人はどう働きゃいいのさ」というところまでの流れが
スムーズに語られていて読みやすかった。

重要なのは「成長」であり、
そのために重要なのは評価のルールが明確になっていることだというあたり
以前別の分野で考えていたことと重なって面白かった。

教育機関で仕事をしていた頃
似たような話で激しく議論したことがある。

そこでは学習者の評価をするにあたって評価基準は公開されず
指導する側にしかわからないようになっていた。
当時はそれが当たり前だった。

基準非公開の理由は
「基準を明示してしまったら、
 いい成績を取るためにそれだけを目指す輩が出てくる」
というものだったんだけど、これはおかしな話だと思う。

そもそも教育機関は学習者が成長するための場所であって、
学習内容と成長と評価が連動していれば
高い評価を受けるための行為とは
すなわち大きく成長するための行為であるはず。

単なる点数稼ぎで良い評価が得られるのなら
それは評価基準の方が間違っている。

現実問題として完璧な評価基準を作るのは難しいけど
その前提を捨ててしまうのは違うんじゃないかと思った。

その後制度はだいぶ変わったらしく、
学習者には見えないパラメータが残ってはいるものの
評価基準を明示するのがだんだん一般的になってきている模様。
制度作りに関わった人はずいぶん苦心したんじゃないだろうか。

企業での人事制度についていえば
本書が一つの大きな指針になると思う。
「即戦力」を求める前に、
あるいは「この会社に勤めてても稼げない」と諦める前に、
一度目を通してみるといいかもしれない。



「即戦力」に頼る会社は必ずダメになる
松本 順市 (著)

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6 Responses to “「即戦力」に頼る会社は必ずダメになる”

  • 松本順市

    2009/09/30 17:52

    ご紹介ありがとうございました。
    「評価」は何故するのか?
    ほとんどの方が、「昇給・賞与」を決めるためと考えています。
    そうではないのです。
    成長の確認が「評価」の最大の目的なのです。
    教育機関でもそのことが理解されていないのですね。
    この新刊、教育機関の関係者にも読んでもらえたらと思います。
    ありがとうございました。感謝!

  • 2009/09/30 19:18

    読みたい。

    「即戦力」に頼る会社は必ずダメになる
    読みたいっ。
    っとひさびさに思えた本。
    確かにねぇ。
    人への投資、これも大事。

  • 2009/10/01 12:08

    教育現場での生徒の評価とダメな会社の人事制度の共通点

    当ブログをご訪問いただきありがとうございます(感謝)。何気にカープが地元で3連勝して嬉しい広島・呉の社会保険労務士石井孝治です。
    前回紹介した「即戦力」…

  • 2009/10/02 06:35

    はじめまして!
    ギクリとさせられるタイトルに内容が
    気になって仕方ないです
    本屋で是非とも買って読みたいと思います

  • 2009/10/03 16:40

    そーいえば、私のいる業界でも「即戦力」って話はよくするなぁ。

  • 2009/10/21 19:45

    奴隷制度と人材派遣について考えてみたことはありますか? 人事・評価・給与の面から考えた、成長できる風土作りとは?

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