誤訳の女王、日本語力の重要性を大いに語る

プロの手腕を見せつけるのはいいのだが、
その前に欠陥商品を減らす努力はできないのだろうか。

iza: 「重要なのは日本語の力」字幕翻訳家・戸田奈津子

 「つまり、重要なのは日本語の力。この仕事は、英語ができるなんて全くのスタートラインであって、何の自慢にもならないんです。日本語でどう表現するか、そこがプロの手腕の見せどころですね」

この人が「誤訳の女王」と呼ばれているのは有名な話だし
現代人はそんな喋り方しねえよ」と思う人も多いだろうが、
そのこと自体を論っても仕方がない。
問題はある生産者の製品そのものではなくて、
その業界の特異性にある。
工業の世界だったら
これほどまでに欠陥商品を連発すると間違いなく仕事がなくなるが、
字幕翻訳業界は事情が異なるのだ。
観ていて「え?今のどういうこと?」ということがあっても、
善良な映画ファンは字幕のせいだとは思わず
わからないのは自分に理解力がないせいだと思ってくれる。
掃除機を買ってきてそれで掃除をしても一向に綺麗にならないとき
ああ、これは私の使い方が悪いのね
と思ってくれるようなものだ。
不良品を売っても苦情が来ないのだから、
こんなにチョロい仕事はない。
逆に、どんなに質の高い製品を造る人がいても
社内で「え?なに?そんなやつ知らん
といわれたらそれまでだから
発注者は「無難な」ところへ依頼を出すわけだ。
他に人がいないのかというと、実はそんなことはない。
法的にアリかナシかは別にして
外国の映画に俺字幕をつけてネットに流している人はたくさんいるし、
それらの作品は決して悪くない。
優秀な若手はたくさんいるのだ。
誰かが勇気を出して、
そろそろ女王様に引退していただくという方向でどうだろうか。
自主的にそうしていただけるとなお良い。
映画ファン」を自認するならなおのこと。
自分が好きで仕事をするのもいいが、
優秀な後輩に経験を積むチャンスを与えるのもまた
先行者の義務ではないだろうか。

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6 Responses to “誤訳の女王、日本語力の重要性を大いに語る”

  • 2006/12/04 10:49

    まったくもって同感。
    「誤訳」もそうなんですが、あのお方の字幕は、「場面とキャラクターにふさわしくない言葉遣い」が結構てんこ盛りなので、すっげぇストレスが溜まります。
    映画を観に行って、冒頭に「字幕: 戸田奈津子」とあると3割方観る気が失せます。DVDだと、パッケージに表記してあった時点で5割は買う気が失せます。
    プロ翻訳者にとってホントに重要なのは、「その日本語が読み手にどのように伝わっているのか」を見極める眼力だと思うんですけどね。

  • 2006/12/04 16:22

    > ohkoshiさん
    コメントくださると思ってました。
    まぁ主人公が20代なのに、ネットも使わないような70歳が翻訳してもアレですわなあ。

  • 2006/12/04 18:26

    この人の名前が出ると、「またか」って思うのは私だけじゃなかったんですね。
    そういえば、映画の台本を原文と翻訳とが記載された本が出ていましたが、最近見ませんね。
    やっぱりこの方の問題のせいなんでしょうか?
    映画を観ながら、英語を聞きながら翻訳と比べて、自分の英語力の勉強をしている人にとっては、不幸なことですね。
    ドラえもんの声が変わったのだから、あなたもって言える配給会社が無いんですね。

  • 2006/12/07 12:40

    > やんじさん
    原文と翻訳を載せた本、売られてますよ。ただあまり売れないんじゃないですかね。大きい本屋さんでしかみません。
    ドラえもんの声の場合はもとのがあまりに良かったのでなぞらえるのは難しい気もします。

  • upstate

    2007/01/21 12:11

    ごめんなさい。いきなり。アメリカで学生しています。
    でも、本当にあの人の翻訳は面白いですよね。
    どんな種類の映画でも「てやんで~」みたいなwwww

  • 2007/01/21 21:39

    > upstateさん
    橋田壽賀子の脚本と通じるところがある気がします。「今どきの高校生がそんなしゃべり方するかいな」というあたり。