実際にあった「それでもボクはやってない」

ずっと見たいと思いながら機会が持てなかった映画
『それでもボクはやってない』をやっと見た。

映画の内容やら裁判制度への疑問やらは置いといて、
個人的な「それでもボクはやってない」を思い出したので。

おそるおそる走っておりました

もうずっと前、就職した年の初夏だったと思う。
神戸あたりを車で移動していた。

真夜中である上によく知らない道で
かなりゆっくり走っていたためか
後ろから来た白いパジェロに追い越された。
「あーもう邪魔!」と言わんばかりの勢いで。

そのすぐ後。突然何かが視界に入った。

それは、停車を求める赤い旗。
持っているのはおまわりさん。

18キロオーバー?

速度違反の取り締まりだった。

側道に誘導されて降車。
いわゆるワンボックス型の警察車両の中へ連れて行かれた。
中にいた警察の人によると、容疑は18 km/h の超過。

どう考えてもそれはない。
周りに迷惑かなあと思うような低速で走ってて
現にさっき抜かれたばっかりなのに。

それで思い当たった。パジェロだ。

ボクじゃないですよ

おそらくオーバースピードだったのはさっきの白いパジェロ。
そのスピードが測定器に検出されたのだろう。

でも車の特定は目視で行われるので
係の人からこちらの車のナンバーが伝えられて御用
という流れしか考えられない。

その時はまだ
状況さえ説明すれば済む話だと思っていた。
ちょっと前まで学生だった頃のこと。
今よりずっと世の中のことがわかっていなかった。

さきほどの状況を説明した。

だからパジェロが…!

返ってきた言葉は
「でもちゃんと数字が出てるからね。」

えーと、聞いてました?
だからその数字は抜いてったパジェr「いやでも数字出てるから。」

何度同じことを説明して
何度同じ返事をされたことか。
だんだん、可笑しいような悲しいような
よくわからない気持ちになってきた。

「とにかくサインして」

返事の後には必ず紙切れを差し出して
「とにかくここにサインね」と促してくる。
そしてまた「いやだから」「でも数字が」の繰り返し。

やっとわかってきた。
この人は、というかこの人たちは
事実がどうであるかかには興味がないんだ。
正確に言うと、事実がどうであるかを確認するのは
この人たちの仕事じゃないんだ。

この人たちの仕事は
一定の数値が出ていることを確認して
運転手にサインをさせること。
今夜のうちに挙げるべき人数があるから
いちいち話なんて聞いてたらきりがない。

そしてついに出た一言。

「とにかくサインしないと帰れないから。」

埒があかない

その書類にサインするということは
自らの罪を認めるということ。

法律の専門家ではないので
自分の中の常識のレベルでしか言えないんだけど、
罪を認めていない者にサインを強要して
拘束を続けるのは違法じゃないだろうか。
詳しい人がいたら教えてください。

とはいえ、車内には同乗者が残されたまま。
不安な思いでずっと待たせていることも気になり始めた。

このままでは埒があかない。
とりあえずここから離れて、
あとでちゃんと申し開きをするのがいいんじゃないか。
今から考えたらこれが大きな間違いだったんだけど
そのときはそう判断してしまった。

サインした。

出頭なんてできません

後日、何か金払えとかいう書面が送られてきた。
もちろん払う気はないので放置。

この件とはまったく関係なく、
警察に顔を出すこともある仕事だったので
職場がある地域の「中央警察」に行って
そこの人と話をしていた。

一応仕事の都合で行ったんだけど
仲良くなっていろいろ関係ない話も。
そのうち件の反則金の話になった。

「違反の事実がなかったとしても、
 払わなかったら兵庫まで行くことになると思います。
 残念ながらうちではどうすることもできないんですよ。」
とのこと。
実際どうなるのか知らないけど、
そのおまわりさんによるとそういう話だった。

無理。
働き出したばかりで右も左もわからない状態。
研修もあれば自分でいろいろやってみるべきこともあり
兵庫県警に呼びつけられたとして
とても休みを取って申し開きに行くゆとりはなかった。

もちろん制度としては休みを取ることはできるが
その結果不利益を被るのは自分自身と仕事で関わる人たち。

反則金の額はともかく
自分の名誉とのトレードオフは少々悩ましかったが
そのことで周りにご迷惑をかけるわけにもいかないと
そのときは判断した。

払った。

それでもボクはやってない

反則金というのはそもそも
手続きを簡略化するための制度なので
支払ったらそれで終了。
申し開きもなければ審理もない。

違反切符にサインをして
反則金を納付したのだから
これはもう行政上は違反の事実を自ら認めたことになる。

本当に認めないのなら、
最初の時点でサインをすべきではないし
反則金を納めるべきでもない。

もはやここに言い訳のようなことを書いたところで
何が覆るわけでもないことはわかっている。

それでもボクはやってない。

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8 Responses to “実際にあった「それでもボクはやってない」”

  • なつ

    2009/04/12 18:53

    これは・・・・怖いですね。こんなにいいかげんな判定でいいの?こういう時って、どうしたらいいんですかね。

  • Anonymous

    2009/04/13 00:13

    しかし、あなたはやりました。
    だって、警察が違反したっていってるんだもん。

  • 2009/04/13 00:19

    「それでもボクはやってない」というなら、その場でサインしなければいいです。「出るトコ出ますので、この場ではサインしません」と宣言して。そうすると、後日裁判で争うことになります。その場で言い争っても、時間を浪費するだけで、おそらく全く意味がないです。
    ちなみに、反則金を納付しても前科はつきませんが、裁判で争った結果、負けると、反則金ではなく罰金になり、前科がつきます。警察はそれを言って、ここでサインしちゃった方がいいよ、前科がついたら大変でしょうなどと脅してきますが、身の潔白を信じるならそういう脅しには屈せず、突っぱねるといいです。
    ワタシ、それで裁判までしたことがあります。ま、ダメでしたけど、とりあえず言いたいことは言ってきたので諦めもつきました。
    ちなみに、行政法違反の前科は3年で消えますので、3年間転職しなければ、履歴書に記載する必要はないです(笑)。

  •   

    2009/04/13 00:51

    メーカができることは、車自体に速度の記録をするシステムを作ればいいと思う。そういうのは今の時代なら十分可能だし、こういった間違いもなくなるだろう。(まあ、そのシステムをいじられないようにするのは大変だが)
    あとは速度計をカメラでずっと記録していくとか。

  • 2009/04/13 06:03

    反則金は払わないからってそれを理由に逮捕されないし処罰もされない。裁判にもならないよ。
    でも警察相手にもめるといろんなプレッシャーで大変なんだよね。だからこのエントリはよく分かる。
    でもこれこそまさに「自分でいろいろやってみるべきこと」だったんだろうけど、「法治国家」に生きる以上。

  • Anonymous

    2009/04/13 10:48

    警察にとって重要な収入源だからね。
    誰がやったかは関係ないらしいです。
    払ってくれりゃ良いんだよと。
    違反の危険性についてはあまり言わず、
    すぐ金と点数の話をするので、まるで
    買い物してポイントカードのやりとり
    してるみたい。

  • Anonymous

    2009/04/13 11:54

    たいへんでしたね。ほんとに頭にくる話です。ちょっと話はちがいますが横柄な警察官ってほんとに頭にくる。

  • Anonymous

    2009/04/14 14:49

    似たようなことがありました。
    サインの横に、警官に強制的にサインを求められましたと但し書きしてサインしたよ。
    その後は無いのでどうなったことやら。